能島の桜伐採の住民意見交換会(2/13)
能島城跡の現況
意見交換会の様子
掲題のテーマは、能島の里が提唱する〝潮流美術館構想〟とも大きく関係するだけに、放ってはおけない課題です。どういう方向性で能島城跡の保存整備活用事業が進められていくのかを確かめに、丹下・小山君ら若手会員とともに会合に参加しました。会場には20名余りの住民が詰めかけ、皆さん何やらひとこと言いたそうな印象を抱いたしだいです。実際、今治市教委文化振興課からの説明(約30分)後、住民10名ほどから意見・質問がありました。この件は宮窪地域の活性化だけでなく、今治市全体の観光振興にとっても重要な課題であると認識したしだいです。
行政担当者の説明を聞いて感じたことは、桜伐採は、もう避けては通れない時期にきていて、それは国史跡・能島城跡の保存整備と大きくかかわっているということでした。根の伸長や倒木が遺跡を破壊することはすでに紹介済みですが、他にも桜の弊害がいくつか示されました。発掘調査もこのほど終了し、来年度は報告書の刊行が予定されていますが、以後は保存管理の方向性(基本計画・実施計画)を文化庁に示し、平成34~37年度には整備工事に着手しなければなりません。本丸・二の丸・三の丸の桜は、平成31年度までには全面伐採したいとする意向のようです(文化財保護法に沿った必要措置)。
実際、能島には現在140本余りの桜があるようですが、このうち3分の2は病気にかかっていて、放っておいても寿命は長くないようです。惜しまれるのは残り3分の1の若い木ですが、移植は可能とのことで、島内で唯一植樹可能な場所が南部平坦地です。ここは戦国時代の埋立地ですが、さらに盛り土と防根シートを施せば、地中の遺構を傷つける心配はありません。一方の本丸や二の丸は、遺構が浅い場所にあるため、それらの処置ができません。鯛崎島の桜についても、同島に遺構が確認されることから伐採予定とのことでした。
今年、能島城跡は「日本遺産」への登録申請が予定されていて、これが認められれば、さらに注目が集まり、観光客も増えることでしょう。村上水軍博物館の発表では、平成25年度は1,500人、26年度は2,500人、27年度は3,500人以上の上陸者があるようです。26年度以降は地元漁協と旅行会社が連携し、上陸ツアーを実施していて、その相乗効果で博物館の入館者数も伸び、地元には少なからず経済効果が見られるようです。今後は、筆者の個人的な意見としましては、〝史跡の島〟として能島を再生する方向性が望ましいように思います(意見は出ませんでしたが、現場からは上陸桟橋改修を望む声もあがっています。現状では、大勢の観光客を上陸させるには危険とのこと)。
ただ、地元住民の中には行政への不信感があり、桜を伐採したあと、きちんと島を管理するのかどうかを質問する出席者もいました。現状としましては、遺跡の発掘調査を始めて以降、職員が定期的に島を巡視し、上陸ツアーのガイドも巡視に配慮しているようです。現在、能島城跡の保存整備活用事業に取り組んでいる職員らは、若手中堅の有能な歴史研究者でもあります。彼らを信じつつ、私たち住民も、まちづくりのビジョンを思索しなければならないと感じたしだいです。